第8回「先輩音楽人に聞け!」は吉野ミユキさんです。

吉野ミユキ(よしのみゆき)サックスプレーヤー

吉野ミユキ(よしのみゆき) 埼玉県出身。 
10歳からアルト・サックスを始める。 04年エイベックスより女性ビッグバンド "Blue Aeronauts Orchestra" のCDとDVD をリリース。 09年リーダーアルバム "Straightaway" をリリース。 スイング・ジャーナル誌の09年度ジャズ・ディスク大賞「日本ジャズ賞」にノミネート。 10年スイング・ジャーナル誌「ジャズメン読者人気投票・アルトサックス部門」12位。作曲とアレンジも手掛ける。 ウォームな音色と誠実なプレイには定評があり、今後の活躍がますます期待される。


文・インタビュー 佐藤ヒロオ(さとう ひろお)

1962年9月18日生まれ。
毎晩、トッププロミュージシャンが演奏していることで全国的に知られるライブハウス「荻窪ルースター」のオーナー。著書「荻窪ルースター物語」、「ライブハウス オーナーが教える絶対に盛り上がるライブステージング術」(ポット出版)がある。


★去年あたりから世間から「女子ジャズ」という言葉を聞くようになりました。
一般的にこれは女子がジャズを演奏することではなくて、「女子だってジャズを楽しもうよ」という聴く方の意味合いで使われていると思われます。

こういう言葉が出てくるってことは、逆に考えれば「ジャズは男性向けの音楽で、女子やこどもには難しい音楽」というイメージもあるということかもしれません。

では実際のジャズの現場ではその辺のことはどうなっているのでしょうか?サックス奏者の吉野ミユキさんに伺ってみました。

■吉野さんはジャズの現場で長年、女子として活動されてきたわけですが(笑)、昔と今では状況は違いますでしょうか?

はい、私は長年ジャズの現場で…って、長年が余計です(笑)。でも本当に最近は、私が演奏活動を始めた時に比べて女子のプレイヤーが増えてきましたし、レベルも確実に上がりました。

私が最初にジャズのライブハウスのセッションに参加した時には、周りは男性ばっかりで、珍しがられたもんです。

「水着で演奏して〜」とかセクハラにも合いました…。今ではまったく言われなくなりましたけどね(笑)。
女子だけでビッグバンドもやれちゃう時代になり、私も嬉しいですよ。

■女子だけのビックバンドですか? すごいですね。そういえば映画で「スイングガールズ」ってありましたけど、あの映画の影響でサックスがすごく売れたって聞いたことがあります。

そうですよね。
あの映画の女優さんたちは、一から楽器を始めた人がほとんどで、撮影の期間中にどんどん上手くなっていったみたいです。ある意味、ドキュメンタリー映画ですよね。

そんな生々しさもあり、楽器を始めてみようと思った人が増えたんだと思います。

■ジャズを好きになるのってやはり何かきっかけがあるんでしょうか?

映画もそうかもしれませんけど、きっかけは人それぞれだと思います。

私の場合は、小学生の時に吹奏楽部に入りアルトサックスに出会って大好きになって、毎日夢中で練習しました。

それで、アルトサックスの音色を生かす音楽というのを自分で探して、ジャズにたどり着いたわけです。

自分のお小遣いで渡辺貞夫さんのレコードを買うシブイ小学生でした。
あ、うっかりレコードと言ってしまいました!年齢がバレますね(笑)。

一般的には何十年も前ですが、ジャズ喫茶ブームというのがあって、それをきっかけにジャズを好きになった人も多いでしょうね。

当時、ジャズ喫茶に通った人は、圧倒的に男性のほうが多いと思いますけど。

■なるほど。ゆえにジャズ聴いている人にはおじさんが多いと…。

そうですね。ジャズが文学や映画にもつながり、ステイタスになっていた時代だったんだと思います。

隣りに座っているシブイおじさんがマニアックなリクエストをしているのを見て、「あぁ、俺もジャズに詳しくなってカッコいい曲をリクエストしたい」って思った学生さんもたくさんいたと思いますよ。

そういうことがきっかけで、もっと詳しくジャズを知りたいな、と思うんじゃないのかな。


■ジャズ喫茶は流している曲のレコードジャケットを掲げてくれてますからそれを見て「これがマイルス・デイビスなのか」って徐々に覚えていった人も多かったのでしょうね。

そうですね。今みたいになんでもYOU TUBEで聴けるなんて時代ではありませんでした。

レコードって高いから、自分じゃなかなか買えなくて、いろんなレコードを聴くためにはジャズ喫茶に行くしか方法が無かったわけです。

長年ジャズをやっている私の確かな意見でございます(笑)。


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