■譜面はどういう風に書いてあるんですか？

○普通にイントロのメロディと歌のメロディにコードが書いてあってみたいなものかな。

だからね、ピアノとかサックスとかの人がいたら、歌の人とかが指示出して、ここはサックスで吹いてくださいみたいな。

■ということは譜面を初見で弾かなければならないわけですよね。

○うん。でもそれは普通かな。

そこに文章が書いてあってそれを口に出して読むのと譜面を弾くことは同じレベル。

それがこっちの世界では割と普通だから。

でも、ただ譜面を弾けるだけではまだだめかも。

文章を読みあげるだけなら誰でもできるけど、役者やアナウンサーは読むのも上手。
そういうことかもね。

■譜面をそのまま弾けるということ以外に大切なことはどんなことでしょう？

○音色や音量ももちろんそのつど対応できなくてはならないけど、やっぱりニュアンスかなあ。

場合にもよるけどすごく有名なイントロの曲があったら聴いているお客さんもみんな知っているだろうし、なんとなく原曲に近い雰囲気で弾いてみたりとか、あるいはロックっぽい曲をジャズでやったらみたいなアレンジならメロディも若干変えたりするしね。

でもね、それは譜面には書いてないことだし、そういうところは自分の引き出しから出してくる感じかな。

もちろん、譜面に書いてないオブリとか入れたりもするけど、それらもそういうの入っていそうな雰囲気がしたら入れてるかな。

■引き出しという言葉が出ましたけども、それはギターのフレーズや弾き方でしょうか？

○まあ、そうなんだけど、えーと、ロックしか弾いたことのない人にジャズ弾いてもらうわけにはいかないよね。

ジャズを弾くためにはジャズを弾けるようになっていないといけない。

で、ジャンルはいっぱいあるよね。ラテンもブラジルもフランスもあるし。

それらを弾くためにはやっぱり、いっぱい自分の引き出しにいろんな音楽を詰め込んでおかないといけない。

深くは知らなかったとしてもどのジャンルも弾けるようにしておかないと。
なにしろジャンルによってリズムのグルーヴ感の違いとかある。

そういうのを知らないとせっかくのアレンジもそれ風にならなかったりしちゃう。

あとね、瞬発力。
曲中に何があっても対応できる瞬発力。

これけっこう重要かも。

そういうのを持っていた上でギター弾かないとバレちゃうもんね。

■バレちゃう？(笑)

○そう。わかってないのとわかってるのとでは聴く人が聴いたらわかっちゃうから。

その意味でもいろんなジャンルを聴いておかないと。

でもね、それぞれのジャンルにはさ、すっごいもうそればっかりやっている専門のミュージシャンがいるでしょ。

そういう人には勝てない部分はある。

だからって、その日にね、いろんなジャンルを演奏しなきゃならないならさ、そのジャンルごとにひとりずつギタリスト呼んでくるわけにいかないじゃない。

すっごい大金持ちの企画だったらそれやれるかもしれないけど、(笑)。

そんなこと誰もしないもんね。

■なるほど、オールジャンルプレイヤーだと声も掛かりやすいわけですね。引き出しの他に北川さんが多くの現場に誘われる理由はなんでしょうか？

○それはねー、大御所にならないこと(笑)！

偉くなっちゃうとね、誘いにくいの。たとえば、「こんな仕事じゃ申し訳ないから」って。

あとね、俺、良い人だからかな(笑)。

音楽ってやっぱり意見が食い違うこともあるよね。
「そこはこう弾いてほしい」とかね。

もしもそう言われたら俺、言われたように弾いちゃう(笑)。

大御所には「そうじゃなくてこう弾いて」って指示出ししにくいことってあるしね。

■北川さんはいつもニコニコしているイメージがありますものね。

○いや、俺、ギター弾くの楽しいんだもん。
悲しい曲も笑顔で弾いちゃう(笑)。

それに誘ってもらえるのはやっぱり嬉しいし、ライブで弾くのって楽しいから。

音楽人の読者の方々もギターが必要ならぜひ呼んでくださいねー。